金太郎劇場 腕一本の介護

 関市で左半身の不自由な61才の息子が介護疲れの末、母親を殺害してしまった。

 私も同じ世代の65才で寝たきりの母親を介護しているので、この記事を身につまされる思いで読んだ。

 左手が使えない介護がいかに大変か実際にやってみた。体温計が皮膚に引っかかり脇の下に入らない。ギューッと無理に入れようとすると、声を出して痛がった。

 さぁー、問題はおむつ替え。案の定、おむつがうまくはずせない。とっさに頭を足の下にすべらせ首と肩で支えながらおむつをはずした。まるで柔道の寝技だった。そのとき、私の顔にあたたかいものが……。

 とにかく片手ではタオルが絞れない。紐が結べないと出来ないことばかり。時間も倍以上かかってしまった。

 こんな体でホームヘルパーや施設を利用せずひとりで介護すれば疲れてしまう。

 こんな被告に裁判員裁判で懲役4年の判決が出た。介護経験のない裁判員と、特養老人施設の費用や入所に何年も待たされる実態を知らない裁判関係者による判決であった。

 “介護殺人”をなくすために介護制度の充実と私たち一人ひとり介護の強い感心を持たなければならないと思う。

金太郎劇場 小さな命

 晩酌をしているとき30代の男性が、「お宅、猫を飼っていますか?」と意外なことを尋ねてきた。

 訳を聞くと車で轢(ひ)いた猫の飼い主を捜しているところだった。どんな猫か確認してみると街路樹の下にきちんと段ボール箱に入れてあった。それに、市役所に処理の依頼までしていた。

 私だったら多分そのまま走りさっていたと思う。家内にお前ならどうする?に、状況によるけど道路のスミに片付けるだろうと言った。

 交番で猫の話をすると、道路交通法のきまりがないが、役所に連絡して欲しいとのこと。

 小さな命が亡くなり可哀相な出来事なのに、なぜかそのときばかりは心がきれいになった。

金太郎劇場 認知症物語

 「おみゃーの嫁がわしの財布を盗った」と忘れもしない衝撃的なセリフから認知症物語が始まった。

 両親と同居して数年経った昼さがり、しっかり者のお袋が息子の私を手まねきして、うちの中に泥棒がいると真顔でいう。まさか家内がと思うと胸は高まり、大きな波にのみこまれたように我を失った。

 仕舞い忘れた財布が出てくると、わしのおらんときに嫁がそっと置いていったという始末。

 そして、お袋は一度言い出したら後に引かない。泥棒をつかまえてと、私と二人で警察署に何度も足を運んだ。また来たかと、警官がよしよしとなだめると、たよりないとなじるお袋。

 思えばその頃からお袋はあまりお勝手をしなくなり、その分オヤジが総菜やパンを買ってくるようになった。

 そのことを兄弟に言うと、「お袋さんちゃんと話もできるし、しっかりしている」と信用しない。いわゆる“まだらボケ”は一緒に生活していないとわからない。

 お袋にあんた誰といった表情をされ、兄弟はやっと気がついた。

 今は、あー、うー、しか言えない。認知症物語もいよいよ終わりに近づき、死も恐れない様子。

 これは神からの贈り物もしれない。

金太郎劇場 たん吸引器

 顔を真っ赤にしてせき込むお袋の背中をさする。しかし、なかなかたんが切れない。たん吸引器が必要になると思った。

 ケアマネージャー「片山さん、たん吸引器は医療器具なので介護保険の対象外で全額負担になります。安い物で4万円ほどします」と説明してくれた。

 在宅介護者にとっては経済的にも精神的にも負担が大きい。ただ、身体障害者手帳があれば援助されると聞きさっそく申請した。

 娘「お父さんの写真を貼って申請しても大丈夫だよ。おばあちゃんとそっくりだから」と。

 介護はつらくて長い。そんなときユーモアと笑いが救いになる。

金太郎劇場 ながら族

 新聞を読みながら朝食を摂る殿方は多いと思う。私もそうだ。行儀が悪いと奥方には評判が良くない。

 先日、たけしのテレビ番組で、なになにしながら二つのことを同時にすると脳が活性化してボケ防止になると言っていた。

 そこで、私もと思い、ある朝家内のピンチヒッターでご飯を炊きながら(我が家では自動炊飯器が壊れて以来鍋で炊いている)二槽式の洗濯機にスイッチを入れ、お袋の経管栄養の準備をした。さぁー、これで脳が若返るぞと期待した。

 ところがどっこい、ご飯は黒こげ、注ぎ洗いを忘れ、さんざんだった。

 ここで家内の助け船。おこげは茶事で使うのでムダにならないと気遣ってくれた。

 二つのことを同時にするときはその組み合わせが大事。家内はラジオを聞きながら料理する。私は介護しながらボケ防止。