金太郎劇場 見習い

 お袋の背中をさすっていると、病院の清掃のおばさんが「おたくがお兄ちゃん?」
 「はい、私が息子のお兄ちゃんです」
 「いつもお兄ちゃん、お兄ちゃんは、と言っているよ」

 これを聞いたとたん涙が……。認知症がすすんでもお兄ちゃんだけは覚えている。4回目の鼻腔栄養の実習が始まった。

 「注射器で薬を吸ったらチューブに入れる前に、薬の粉が注射器の中に残らないように注射器の先をふさぎます。チューブの横にあるフタはしっかり押さえて開かないようにしてゆっくり注入します」

 無器用で機械に弱い私にとっては難儀だが、お袋の命にかかわることやるしかない。

 実習が終わった時、「片山さん、若く見えるけど70歳ぐらいですか」。尋ねてきた看護師さんの心は、のみこみが悪いのを見て言っている。

 胸の筋肉をピクピクさせて若さをアピールしたが何の役にも立たなかった。

金太郎劇場 日焼け

 日傘で下校する女子高生を見て驚くのはまだ早かった。ヒゲをたくわえた青年が日傘を片手に自転車をスイスイ。これには言葉を失ってしまった。

 しかしよくよく考えてみれば、日傘は体によくしかも「エコ」にもなっている。

 その一方でお金をかけてまで肌を黒くしようとする人もいる。
 
 ボディビルの選手だ。文字通り黒びかりする体で勝負する。黒い方が筋肉のメリハリが良く分かるからだ。 だから女子選手も黒豹になっている。ボディビルダーに黒人選手はいいなと言うと、黒人でも色の薄い人は黒くなろうとしてると。

 私は白でもなく黒でもなく、晩酌で赤くなっている。

金太郎劇場 介護俳句

ほほ骨と あいた口だけ めだつ顔


へその緒と 同じ役目の カテーテル


ポツポツと 鼻から入る 朝ご飯


寝たきりの 年寄顔は みな同じ

金太郎劇場 初孫

 家内は生まれたての初孫を自然にすーっと抱っこするのに、私はこわごわ抱っこで油のきれたロボットのようにぎこちない。

 「おじいちゃん日ごろの力自慢はどうしたの。しっかり抱っこして」と。もうなにを言われてもニコニコ。

 バーベルなら100キロでもスムーズに扱えるのに小さくても命の重さは格別でバーベルのようにはいかなかった。

 孫に「おじいちゃん、抱っこして」の言葉を楽しみに筋トレに一段と熱が入りそうだ。

 知人から祝いに頂いた日本酒「初孫」を堪能した。銘柄の由来は創業時「金久」の酒名を使っていたが、当家の長男誕生を喜び誰からも愛され、親しまれるようにとの願いを込めて初孫に改めたとのこと。(酒田市東北銘醸(株)より)

 思いは私も同じ、実に美味しかった。

金太郎劇場 聴診器

 鼻から流動食をとる経鼻栄養になってしまった。お袋を在宅介護することになった。今までの介護とはちょっと勝手が違う。

 病院で指導を受けている。お袋のジャバラ状の腹をのばし、鳩尾(みぞおち)に聴診器をあて鼻から胃に入っているチューブに注射器のような道具で空気を入れながら「グーグーグルグル」の音をさがす。

 この音を確認してから流動食をセットする。音がしないのはチューブがズレている異常な状態で、このまま入れると逆流などをして危険だと。

 こんな危険な経管栄養は医療従事者しかできないと思っていたが、在宅の難病患者の家族や、指導を受けたホームヘルパーなどは容認されているとのこと。

 それにしても自分が聴診器を手にすることになろうとは……